アイヌの物語 1
かっこうに助けられた子
ハムカッコウ カッコ カッコ
アイヌのこどもが、和人のおとなたちと、魚を取ろうとして海辺で葦を切った上に大きな家を建てました。
「魚とりをしよう!」と言ったけれども、毎日毎日雨降りばかりが続いていました。
ある日、かっこう鳥の子供がやって来て、「津波が来るぞ。みんな早く逃げろ!」と鳴きながら、かっこう鳥は口をパクパクさせて飛び回っていました。羽のある鳥たちは、とびまわりアイヌのこどもはいそいで逃げて家の方へととんで帰りました。浜辺にいた人たちは、おしゃべりを続け、昼も夜もにぎやかにおしゃべりを続けていました。
ある日のこと、沖の方でドンと大きな音がしました。それで小鳥たちはぱっと飛び立ちました。ところが、浜辺の和人たちはおしゃべりを続けていました。アイヌの子は、母親のもとへころがりこんでいきました。かっこうをおいかけて和人が来たのが見えました。母親はこどもを抱きかかえて、ごはんを作るものと、弓をもって海辺の方へと行くと、大きな山があるのが見えました。その山の方へどんどん逃げて、山の頂上にある大きな松の木までやってきました。「アイヌでございます。いつも神に拝んでいるのに、これはまたどうしたことか」と声を出しながらひとり言をいって、さらに逃げました。大きな松に登り、その中に静かにかくれていました。
さて明け方となり、辺りを眺めてみると、魚を取る家は影も形もありませんでした。そのアイヌの親子はかっこうが津波を知らせてくれ、かっこうのようにひそんでいたのでいたので助かりました。それから、カッコウカムイに助けられたので、こどもの名前は「カトコロエカチ」(=幸せな子)と名付けられました。
語り手 故 門野 ハルエ
浅井亨 編『アイヌの昔話』
稲田浩二 編『アイヌの昔話』
アイヌには、洪水や津波を鳥や動物が人間に知らせる話が残っています。これもその一つで、旭川に暮らしていた門野ハルエフチ(媼)が語ったものを、故浅井亨先生が編集して『アイヌの昔話」として残してくれたものです。